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ペンライトは勇者の剣だった

昔からヒーローに憧れていた。

いや憧れとは少し違うかもしれない。ただヒーローが好きだった。
戦隊が大好きで、平成ライダーシリーズとしてクウガが放送されたときもわくわくしながら見ていたことをよく覚えている。ライダーのその後に放送されていたおジャ魔女どれみには目もくれなかったことも。

同年代の女の子がセーラームーンごっこをする横で私は戦隊ごっこやライダーごっこを男の子に混じってよくしてくせにと言われることはなかったわけではないけれどそれ以上に楽しかったからその言葉に対してはあまり反感は覚えなかった。
ただ、周囲の男の子がみんな戦隊や仮面ライダーの変身グッズを持っていて、私の手元にはそれらがなかったことはどうしようもなく寂しかった。

買ってほしいと言ったことはなかった。というのも両親や祖父母が「女の子がほしかった」のだということを親戚の誰かから聞いていたからだ。きっと女の子らしい女の子がほしかったのだろう。祖父母が買い与えてくれたのはいかにも女の子らしいワンピースやおままごとセットだった。両親は私がヒーローものを見ることになにも言わなかったけれど、誕生日プレゼントとしてもらったのはなぜかセーラームーンの変身グッズだった。

結局、私の手元にヒーローのグッズがやってくることはなかった。本当に変身が出来るだとかそんなことを思っていたわけではなかった。でも意気揚々と「変身!」とベルトやグッズを巻いて叫ぶ友達にはきっと嫉妬していた。どうしても羨ましかったのだろう。自分でお手製のベルトを作って巻いている私の写真が今でも家には残っている。

ヒーローになれなかった私は漠然とその羨望を抱えたまま、小学生にあがることとなる。

そして出会ったのが「キングダムハーツ」というゲームだった。

今でこそゲームというコンテンツに骨の髄まで沈んでいる私だが、その当時はファイナルファンタジードラゴンクエストも知らなかった。ポケモンはやっていたけれど、いわゆる「世界を救う勇者」が出てくるようなゲームはしたことがなかった。
私にとっての初めての世界を救う冒険、そう、私が羨望を向けていたヒーローたちと同じように世界を救うための物語。

ヒーローに変身グッズが必要なように、勇者には勇者の剣が必要だ。キングダムハーツにおける勇者の剣は鍵の形をした剣、キーブレードだった。
キングダムハーツが契機となり、私はゲームの世界で様々な旅をした。でもどんなに旅をしても私にとっての勇者の剣はキーブレードのままだった。私がほしくてたまらなかった変身グッズと同じぐらい、キーブレードは私にとってヒーローの象徴のようなものだ。キングダムハーツが生誕から15周年を迎えた今でも、それは変わっていない。

NEWSのアルバムの特典に鍵がつく、と聞いた時私は真っ先にキーブレードを思い浮かべた。
そして同時にぼんやりと期待した。ああ、ペンライトが鍵の形をしていたらいいのにと。
キングダムハーツの根幹をなすテーマが「光と闇」だ。コンサートの中でのある意味標となるペンライトは光そのものだ。不思議とがっちりとはまった二者を叶えてくれたらいいのに、と勝手に思っていた。

だからグッズの画像が流れてきた時、私は不覚にも涙ぐみそうになってしまった。だって、まさか本当に叶えてくれるだなんて思いもしなかったじゃないか。
私にとってのヒーローの象徴。それとよく似たペンライトを大好きでたまらないアイドル達が届けてくれた。時を超えて夢を叶えてもらったようなそんな気分だった。

アイドルは夢を売る職業だと言われることがある。私もそう思っていた。だけど今回のことで「それは少し違うかもしれない」とぼんやり思った。
アイドルは夢を見せてくれる存在だ。でもそれは彼らの夢じゃなくて「私が」勝手に見ている夢だ。「私が勝手に」見ている夢だからもし叶わなかったとしても私は彼らを責めることはできない。自分の夢の後始末ぐらい自分でできる人間でいたい。
でも私の夢だからこそ、私は自分の喜びたいように喜ぶ、そこは「夢みがち」だのなんだの言われようと譲ることはできない。

だから心の底からありがとうと言いたい。ヒーローを夢見た私の手元に勇者の剣とよく似た光を届けてくれて、本当にありがとう。世界を救うような大層なものではないけれど、昔の私の世界をやっと救ってもらえた。ペンライトたった一つですくわれた人間がいるのだということを声を張り上げて伝えたい。